花物語こだいら(高齢者グループホーム)
元々地域に愛された銭湯が建っていた敷地であり、古い銭湯の雰囲気を踏襲した落ち着いた黒い外壁(蔓植物が繁茂するスクリーン付)と、かつて銭湯にあった唐破風の持つ開放性を正面の小学校正門に対して大きく張り出したテラスを持つ大屋根に置き換えることで、町の新たなシンボル性を体現しています。
クライアントはデザインの力を信じ、悪い意味で「施設的」とならない美しい高齢者施設を望んでご依頼をいただきました。地域の歴史や小学校との関係など、施設単体ではなく、地域(都市)全体を俯瞰した私たちの提案に共鳴していただき、「他に無い個性」に大変ご満足いただきました。
「施設的」と言われる典型的なグループホームではなく、「利用者から選ばれる施設」となることを期待して私に依頼が来ました。単に施設を建てれば良いということではなく、地域社会に寄り添い、地域の歴史や背景、小学校との連携など、都市的な視線でデザインをする手法に期待をしていただきました。
昨今の工事費高騰に対してローコストに立てる必要がありました。一般的で安価な木造在来工法としながらも大屋根や緑化スクリーン、縁側などの工夫によって地域に調和した個性を施設に与えました。建材などは特殊なものではなく、あくまで安価で汎用性のあるものを上手に選択することに注力しました。
クライアント様からは
「これまで見たことのない魅力ある施設で大変感謝している」とのお言葉をいただきました。
また私を選んで特に良かった点として、
「施設単体ではなく地域の景観や歴史をコンセプトに取り込んだ考えに感銘した」と言った都市レベルでデザインを考える視点にお褒めのお言葉をいただきました。
南側正面外観:軒裏を木目調にした大屋根と黒系の外壁。バルコニーに配置した縦長の「緑化スクリーン」はツル系植物を繁茂させる仕掛けで、将来は緑の壁面となります。
外観夜景:夜間は内部の活動が地域を照らします。
アプローチ部分夜景:大らかな折り上げ形状を持つ大屋根は地域に開かれた福祉施設のシンボルとなっています。
共用リビング内観:外部の黒系仕上げに対して内部は白と木目を基調とした暖かいインテリアとなっている。窓からは正面にある小学校の児童の活動を望むことができる。
共用リビング内観:大屋根の形状がそのまま内部の開放的な空間を作り出している。正面奥には天井の低い「アルコーブ」と呼ぶ小空間があり、少人数でくつろげる共用の「居場所」を提供している。
個室内観:一般的には小さな窓しか無い個室こそフルハイトの大開口が必要との考えから、自由に外出ができない入居者が隣接する小学校の緑など、四季折々の変化が楽しめるよう配慮した。開放制限機構があるサッシを使用することで利用者が外部に出て行かないように配慮をしている。